初動部隊の構成の仕方その2
「前回の初心者向けWargame: Red Dragon(以下、Wargame: RD)攻略チュートリアルでは、諸兵科連合を意識した部隊構成が重要であることをお話しました」
「今回はその続きです。それでは、マキさん。試しに1500円の予算で初動部隊を構成してみてください」
「わかった。それじゃ、私の好きな自衛隊で初動部隊を作るね♪」
「できたよ、ゆかりん!」
マキの初動部隊(合計1500円)
1.偵察→HMVに乗ったレンジャー×4(120円)
2.対空→GUNTANK×2、改良ホーク×2、HMVに乗ったPSAM対空歩兵×2、F-15×1(450円)
5.対歩兵・対装甲車両→HMVに乗った空挺’90×4、96式装輪装甲車に乗った普導連×4、AH-1Sコブラ×1、F-4EJ改×1、60式自走106mm無反動砲×3(730円)
4.対装甲車両→74式戦車(G)×2、HMVに乗った中MAT×2、三菱中MAT×1(200円)
「どうかな? 我ながら完璧だと思うけど!」
「うーん。いい線をいっているとは思いますが、なんか微妙ですね……」
「どこが微妙なんだよ! ちゃんと時速150キロの輸送車に乗った歩兵部隊を出しているし、その上、諸兵科連合を意識した部隊構成になっているでしょ!」
「マキさん、逆ギレ怖いです」
「いいですか、マキさん。この部隊の編成だと、時速150キロの輸送車に乗った歩兵部隊に時速110キロの対空部隊が随伴できないため、敵のヘリが攻めてきたら即座に対応できないおそれがあります」
「なんだって!」
「その証拠に、この部隊を移動させると、次のようになります」
(↓)時速150キロの輸送車に乗った歩兵部隊と、時速110キロの対空部隊を中央の市街地に向けて同時にスタートさせました。
(↓)しかしながら、歩兵部隊が市街地に到達する頃には、対空部隊は約1700mも後方になってしまいました。この状態で敵のヘリに遭遇したら、空挺はGUNTANKの援護なしに絶望的な戦いを強いられることになります。
「このような遅延は、広いマップにおいて特に顕著にあらわれ、時として致命傷になります」
「そんな〜」
「初動部隊の構成ですが、基本的に、路上速度が時速150キロの前衛部隊と、路上速度が時速110キロの後続部隊に分けて考えるといいです」
初動部隊の構成(前衛部隊と後続部隊の2つに分けて考える)
前衛部隊:路上速度が時速150キロのユニットからなる装輪車両を主体とした部隊
後続部隊:路上速度が時速110キロのユニットからなる装軌車両を主体とした部隊
「だから、対空部隊が時速150キロの前衛部隊に随伴できるよう、時速110キロのGUNTANKか改良ホークのどちらか一方を、時速150キロの短SAMか近SAMに変えましょう」
時速110キロのGUNTANKか改良ホークのどちらか一方
↓
時速150キロの短SAMか近SAMに変える
↓
対空部隊が時速150キロの前衛部隊に随伴できる
(↓)近SAM(93式近距離地対空誘導弾)は時速150キロの装輪車両であり、時速150キロの前衛部隊の随伴に適しています。
(↓)短SAM(81式短距離地対空誘導弾)も時速150キロの装輪車両であり、時速150キロの前衛部隊の随伴に適しています。
「このようにすれば、時速150キロの前衛部隊に随伴する対空部隊と、時速110キロの後続部隊に随伴する対空部隊をそれぞれ揃えることができます」
時速150キロの前衛部隊に随伴→近SAMまたは短SAM
時速110キロの後続部隊に随伴→GUNTANKまたは改良ホーク
「なるほど、前衛部隊と後続部隊の速度に合った対空部隊をそれぞれ随伴させるのか」
「もっとも、対空重視でない場合は、前衛部隊に随伴する対空部隊のみでもいいです」
「ところで、ゆかりん。質問なんだけど、装輪車両と装軌車両って、ぶっちゃけどう違うの?」
「装輪車両は、その名の通り、車輪で走行する車両です。装輪車両は、装軌車両よりも装甲は薄いですが、鋪装された道路上を時速150キロで移動することができるので、初動の陣地確保に適しています」
(↓)装輪車両の例(96式装輪装甲車)。装輪車両は路上速度時速150キロのため、初動の陣地確保に適しています。
「一方、装軌車両は、無限軌道(キャタピラ)で走行する車両です。装軌車両は、一般に装輪車両よりも装甲は厚いですが、路上速度時速110キロなので、初動の陣地確保に向いていません」
(↓)装軌車両の例(74式装甲輸送車)。装軌車両は、路上速度時速110キロなので、初動の陣地確保に向いていません。
「なお、これらの車両は、森林、沼地または農地の生垣等の遮蔽物(cover)内では速度が低下し、その速度の低下の程度は、装輪車両か装軌車両かによって異なります」
森林、沼地または農地の生垣などの遮蔽物(cover)における速度低下
装輪車両:速度50%低下
装軌車両:速度33%低下
↓
装輪車両は森林内等では速度が半減するので、森林内等に移動させるユニットは装軌車両に乗せるとよい
「嘘! 装輪車両って、森林内では50%も速度が半減するんだ!」
「それゆえ、森林内を移動させるユニットは一般に、装輪車両ではなく、装軌車両に乗せるといいですね。もっとも、96式装輪装甲車なら路外速度が100kmなので、森林内でも時速50キロで走ることができますが」
路上を走行させる→装輪車両が最適
森林内を走行させる→装軌車両が最適
「このように、部隊をどの場所に移動させるつもりかによって、装輪車両と装軌車両を使い分けるといいです」
「なるほど。でも、ゆかりん。どうして前衛部隊と後続部隊の2つに分けて考えるの?」
「前衛部隊と後続部隊の2つに分けるメリットはいろいろあります。一つはコストの節約ができる点ですね」
「コストの節約?」
「例えば、自衛隊デッキの場合、時速150キロの装輪車両であるHMV(高機動車)のコストは10円ですが、時速110キロの73式装甲車はコストがわずか5円で済みます」
「序盤では使えるポイントが限られているため、時速150キロの輸送車ばかりで固めると、全般的にコストが高くなってしまいます。だから、一部の部隊に速度は遅いですが、コストの安い輸送車を使うことで、全体のコストダウンを図ることが可能になります」
序盤では使えるコストが限られているため、時速150キロの輸送車ばかりで固めると、全般的にコストが高くなってしまう
↓
時速110キロの安輸送車を使うことで、全体のコストダウンを図ることが可能になる
「でも、時速110キロの輸送車って遅いじゃん」
「だから、時速150キロの輸送車に乗った前衛部隊の歩兵で市街地を確保しておき、時速110キロの後続部隊(主力)が到着するまで橋頭堡を築くわけです」
前衛部隊は、時速150キロの輸送車に乗った歩兵で市街地を確保し、時速110キロの後続部隊(主力)が到着するまで橋頭堡を築く
「このようにすれば、全ての歩兵を時速150キロの輸送車に乗せる必要がなくなります」
「なるほど」
「このように、使えるポイントが限られた序盤においては、特にハイローミックスが大事ですね」
「ハイローミックス?」
「ハイローミックスは、言葉の通り、ハイ(High)とロー(Low)のミックス、すなわち高価なユニットと安価なユニットを組み合わせることにより、コストパフォーマンスに優れた柔軟な部隊運用を可能にする考え方です」
ハイローミックス(High-low mix):高価なユニットと安価なユニットを組み合わせることにより、コストパフォーマンスに優れた柔軟な部隊運用を可能にする考え方
「例えば、スペツナズのような35円もする高級歩兵を55円もするMi-24Dに乗せれば最強のコンビネーションが実現します」
「ですが、このような高級ユニット同士の組み合わせは、1つのユニットを出すにも90円もの資金が必要となるため、コストパフォーマンスが悪く、また咄嗟の状況にも対応できないため、柔軟性に欠けます」
「一方、同じスペツナズを5円のBTR-Dに乗せれば、トータルコストがわずか40円で済むため、コストパフォーマンスに優れ、柔軟な部隊運用が可能になります」
(↓)スペツナズを5円のBTR-Dに乗せたほうが、55円のMi-24Dに乗せるよりもはるかに出しやすく、コストパフォーマンスに優れた柔軟な部隊運用が可能になります。
「海外で定評の高いWargame: RDのガイド『200-Page Guide to Wargame: Red Dragon』の著者であるSandyGunfox氏も……」
「全てのユニットを高級ユニットで固めるのではなく、中程度の値段、中程度の強さのユニットで部隊の主力を構成し、必要なときに最高級のユニットを出して切り札とすることを勧めています」
「なるほど」
「というわけで、今回の初心者向けWargame: RD攻略チュートリアルのまとめです」
初動部隊の構成(前衛部隊と後続部隊の2つに分けて考える)
前衛部隊:路上速度が時速150キロのユニットからなる装輪車両を主体とした部隊
後続部隊:路上速度が時速110キロのユニットからなる装軌車両を主体とした部隊
↓
前衛および後続部隊にそれぞれ随伴する対空ユニットを用意する
(対空重視でない場合は前衛部隊に随伴する対空ユニットのみでも可)
高価(または安価)な歩兵と安価(または高価)な輸送車の組み合わせ(ハイローミックス)により、コストパフォーマンスに優れた柔軟な部隊運用が可能になる